広島の就労継続支援事業の類型とそこで働いている障害者がどれぐらいの賃金をもらっているのかを見てきました。A型では対象の障害者がほぼ通常に近い働きをできます。その代わり、最低賃金が関係してくることから、世間のアルバイトと同水準の対価が支払われていました。
と言うことは、企業にとっては就労継続支援事業A型の障害者に仕事を依頼することは、やや嫌な言い方になりますが、「障害者に優しい職場」や「障害に理解のある職場」として、世間に向けてイメージを向上させる好機になると思います。
なぜアピールするのが効果的に?
もっとも、日本人ならではの「良いことをしているということを宣伝するのは恥ずかしい」という気持ちは無用かも知れません。例えば、近年はLGBTなど社会的マイノリティーへの理解が進み、企業としてもLGBTに配慮した取り組みを進めて対外的に広報することで、どのような人にとっても働きやすい環境であることをアピールするのが普通になってきています。
それでは、なぜ、そんなことをアピールする必要があるのでしょうか。だって、どんな職場環境かということは本来、そこで働いている人を除いてほとんど関係ありませんよね。ところが、そうでもないんですね。少し話は違いますが、最近は「カーボンニュートラルガス」といった商品があります。ガスの製造工程で出る温室効果ガスを、別に実施した植樹活動による温室効果ガス削減効果で相殺し、環境に配慮したガスを購入する、ということです。
そもそもガスというのは品質こそが最重要なはずです。ところが、今ではそれにとどまらず「自分のところに届くガスは、どうやって作られたのか」が重要な意味を持つ時代になってきたんですね。そういう文脈で言えば、例えば「障害のある人が就労に向けた訓練の中で作ったパン」というのは、単にパン製造業者の商品を買うことと異なり、自分は社会的に意味のあることに金を投じた、という満足感をも惹起できます。消費時に満足を覚えさせられる商品というのは、リピートの可能性の高い商品ですから、障害者の就労支援に取り組むことは、企業イメージの向上だけでなく、実際の業績の上昇にもつながる可能性がありそうです。